東京都・稲城市 梨花幼稚園(施工者:創造空間高田工務店、設計・監理:結人建築設計事務所 吉野百合江、一色アトリエ一級建築士事務所 舘野正明、インテリアデザイン:Interior design farm 上杉直子、写真撮影 澤崎信孝「BRAIN SAWAZAKI PHOTOGRAPHY」)
大人が思う子どもぽい可愛いらしさ、を押し付けるのではなく『ひとりの人間として、子どもにもきちんとしたデザイン のいいモノを与えたい』。このような副園長のイメージを具現化した、紺色の外壁をまとったスタイリッシュな外観の木 造の園舎。紺色に加え、銀色の屋根や白い窓枠などのシックな色使いにより、既存のコンクリート打ちっぱなしの園舎と も調和する木造の園舎となった。
この木造の園舎を建てたのは、地元に根を張る小さな工務店とその職人仲間たち。普段は一戸建ての住宅などを手がける 職人たちが集結して、園舎という大空間に挑んだ。地元ならでは、職人の中にはこの幼稚園の卒園生も。そんな彼らの、 日本の木を知り尽くした職人技で、大空間を支えるための見た目も美しい梁が組み上がった。日々、変化し進化してゆく 幼稚園と地元の職人たちの、ちょっとした故障や修繕にもすぐ駆けつけられる、そんな距離感も頼もしい。
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丁寧に加工された国産の木を、職人た ちがコツコツと組み上げていく。職人の中には、この幼稚 園の卒園生もいる。作り手も園も、感慨深い。
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幼稚園の新たなランドマークとしてパッと目を引く、黄色い屋根の雨よけ。木造の園舎とともに新しく造ったもの。
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外壁や屋根の色味を工夫したことで、コンクリート打ちっぱなしの既存の園舎ともよく調和する。それでいて、より月齢の小さな子どもたちにも親しんでもらえるような、木造ならではの温かみも設えた。
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メンテナンス性を重視して、外観に木を使用したのは、雨が当たりづらい庇の内側や玄関まわりなど。
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以前、梨花の森と呼ばれていた木のたくさん生えていたこの場所のイメージを、園舎の玄関デザインに落とし込んだ。
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2~3歳の子どもたちが過ごすため、温かみのある空間になるよう、木造で木を多く取り入れている。
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白いシンプルな廊下なのは、これから通ってくる子どもたちの作品などを飾って映えるように。
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廊下の天窓にちょっとした仕掛けを施し、子どもたちの好奇心をくすぐる。
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天窓からの光が織りなす美しい影。季節や時間で影が移動するのも楽しい。
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各部屋のサイン。モチーフは可愛らしいが、木目と抑 えた色調のおかげで子どもぽくはならず、統一したイメー ジに。
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保育室の入り口に手洗い場を。昔も今も、手を洗うのは大切な習慣なので、小さいうちからしっかり身につけたい。
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同じ月齢でも成長の過程は人それぞれ。スッと中に入れる子もいれば時間のかかる子も。床の素材や天井高を工夫して、どの子も馴染みやすくなるようにしている。
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どんぐり1組の保育室。床はタモ材フローリングで、子どもにはもちろん、ここで働く職員にも優しく心地よい。
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どんぐり1組と2組の間の壁は可動式。壁を開けるとこんな大空間が現れる。
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柱のないこの大空間を支えるために必要な天井の 梁。構造として必要なだけでなく、空間を彩るデザインの 要素としても美しい。
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床面と梁の木の色に対し、天井や壁、壁に作り付けの 棚も白で統一。バランスよく抜け感のある空間に。
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どんぐり1組と2組の保育室の間に、どちらの保育室 からも入れる子ども用のおトイレ。清潔感があり、気持ち よく過ごせる。
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大空間を支えるために必要な梁に使う木材は、静岡 産の杉。この長さを切り出して加工できる場所は国内でも 限られている。